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相続放棄の期限である 3 か月を過ぎてしまっても放棄できますか?

「故人に借金があったと判明したが、相続放棄の期限を過ぎてしまったようだ……」「3 か月を過ぎたが相続放棄したい」などとお悩みでしょうか?

相続放棄の期限は、相続の開始があったことを知ってから3 か月です。事前に延長を申し出ていない限り、基本的に3 か月を過ぎると相続放棄はできません。

とはいえ、例外的に相続放棄が認められるケースも存在します。3 か月を過ぎたからといってすぐに諦めないでください。

今回は、相続放棄の期限や、期限を過ぎたときの対処法などについて解説しています。故人の借金が発覚したなどの理由で相続放棄を検討している方は、ぜひ最後までお読みください。

相続放棄とは何か?

相続放棄

そもそも相続放棄とは、遺産に属するプラス・マイナスいずれの財産についても、権利・義務を一切引き継がないことです。

通常、被相続人(亡くなった人)が有していた財産は、プラス・マイナスを問わず相続人が引き継ぎます(民法896条)。遺産についての権利義務をすべて引き継ぐ方法は「単純承認」と呼ばれ、相続の原則的な方法になります(民法920条)。単純承認では、不動産・預貯金をはじめとするプラスの財産だけでなく、借金などマイナスの財産もすべて相続の対象です。

しかし、被相続人が多くの借金を抱えて亡くなったなど、相続人にとって相続に伴う負担が大きいケースもあるでしょう。そこで「限定承認」と「相続放棄」という方法も用意されています。

限定承認は「相続で得るプラスの財産の範囲で借金を返済する」との条件で相続する方法です(民法922条)。借金が多くても、プラスの財産の範囲でしか責任を負わずに済む点がメリットになります。プラス・マイナスのいずれが多いかわからない場合や、どうしても受け取りたい財産があるときには有効な方法です。ただし、相続人全員の同意のもと、3 か月以内に財産目録を作成して家庭裁判所に申し出る必要があります(民法923条、924条)。手続きのハードルが高いため、実際にはあまり利用されていません。

現実には、相続財産に借金が多いときには相続放棄をするケースが大半です。被相続人の借金を引き継がずに済む点が、相続放棄の大きなメリットといえます。他に、相続に伴う手続きやトラブルに関わりたくないときなどにも利用されます。

【参考】相続放棄とは

相続放棄の「3 か月ルール」とは?

相続放棄をするには、裁判所への申立てが不可欠です。裁判所への申立ては、相続の開始を知った時から3 か月以内にしなければなりません(民法915条1項)。これが相続放棄の「3 か月ルール」です。

相続放棄を検討している場合には、3 か月以内に財産調査を終え、単純承認、限定承認、相続放棄のいずれを選択するかを決めなければなりません。何もせずに3 か月が経過すると、単純承認をしたとみなされてしまいます(民法921条2号)。莫大な借金を引き継ぐリスクを避けるためには、早めに調査や手続きを進める必要があります。

ただし、いったん相続方法を決めると、3 か月の期間内であっても撤回はできません(民法919条1項)。「相続放棄をしたが、実はプラスの財産の方が多いと判明した」となっても後の祭りです。相続放棄を焦るあまり、調査が不十分な状態で決断しないように気をつけてください。

相続財産が多岐にわたるなどの理由で3 か月以内に決めるのが難しいときには、期限を延長してもらう方法もあります。延長してもらうためには、3 か月の期間内に裁判所に申し出なければなりません。申立書に戸籍など必要書類を添付して提出してください。裁判所に認められた期間分は期限が延長され、相続方法を判断するための時間を確保できます。

【参考】相続の承認又は放棄の期間の伸長|裁判所

なお、何もせずに3 か月が過ぎた場合の他にも、法律上自動的に単純承認をしたとみなされるケースがあります(民法921条各号)。たとえば、遺産を処分したケースや隠したケースです。勝手に不動産を売却する、預金を引き出して使用するといった行為には注意してください。いかなる行為をすれば単純承認とみなされるかの判断は難しいため、遺産に手をつける前に弁護士に確認しましょう。

3 か月を過ぎてしまった際には放棄できない?

砂時計とカレンダー

何もせずに3 か月を過ぎてしまった場合には単純承認をしたとみなされ、原則として相続放棄はできません。たとえ「相続放棄の制度を知らなかった」「手続きをする時間がなかった」といった事情があっても、結論は同じです。

ただし、被相続人が亡くなった事実を知らなかった、借金の存在を知りようがなかったといったケースでは、死亡から3 か月を過ぎても相続放棄ができる可能性もあります。

そもそも、3 か月の期間がスタートするのは「自己のための相続の開始があったことを知った時」です。「相続の開始」とは、具体的には被相続人が亡くなったことを指します(民法882条)。したがって、被相続人と疎遠であったなどの理由で死亡の事実を知らないまま過ごしていれば、3 か月の期間はカウントされません。親族からの連絡などで知った時から3 か月以内であれば、相続放棄は可能です。

期間は相続人ごとに別々にカウントされます(最高裁昭和51年7月1日判決)。他の相続人が死亡の事実を知っていても、自分が知らないうちは期間が進行しません。

他には、相続人が相続放棄をした結果、元々相続人でなかった人が相続人になるケースがあります。たとえば、被相続人の子全員が相続放棄をして、兄弟姉妹が相続人になる場合です。この場合は、兄弟姉妹自身が相続人になった事実を知った時から3 か月の期間がカウントされます。

相続人が承認・放棄を判断する前に死亡した結果新たに相続権を得た人についても、自分自身が相続人になった事実を知った時から期間を数えます(民法916条)。たとえば、祖父・父が相次いで亡くなり、子(祖父から見て孫)が相続権を得たケースです。

いずれにしても、被相続人が死亡して自分が相続人になった事実を知れば、期間のカウントが始まります。スタートから何もせずに期限を過ぎてしまうと、相続放棄はできません。

ただし、例外的に3 か月を過ぎても相続放棄が認められるケースもあります。

三か月以内に限定承認又は相続放棄をしなかったのが、被相続人に相続財産が全く存在しないと信じたためであり、かつ、被相続人の生活歴、被相続人と相続人との間の交際状態その他諸般の状況からみて当該相続人に対し相続財産の有無の調査を期待することが著しく困難な事情があって、相続人において右のように信ずるについて相当な理由があると認められるときには、相続人が前記の各事実を知った時から熟慮期間を起算すべきであるとすることは相当でないものというべきであり、熟慮期間は相続人が相続財産の全部又は一部の存在を認識した時又は通常これを認識しうべき時から起算すべきものと解するのが相当である。

最高裁昭和59年4月27日判決

被相続人との関わりが一切なく、借金の存在を知るすべがなかったようなケースでは、例外的に3 か月を過ぎても相続放棄が認められる可能性はあります。あくまで例外であるため簡単には認められませんが、諦めずにすぐに弁護士にご相談ください。

【参考】相続放棄で注意すべきこと

 亡くなった方の借金は時効援用や債務整理もできます

何もせずに期間が過ぎて相続放棄ができなくなれば、借金を引き継がなければなりません。借金を相続したときには、時効援用や債務整理により負担を免れる方法があります。。

借金は、請求されないまま法律上定められた期間が経過すると消滅時効にかかり、返済する義務がなくなります。時効により消滅するとの効果を得るために必要なのが「時効の援用」です。時効にかかった借金を免れるためには、時効を援用する旨を債権者に示しましょう。確実に証拠を残すために、内容証明郵便を利用するのがオススメです。時効期間が経過していても、債務の存在を認めると時効の援用ができなくなるのでくれぐれも注意してください。

時効にかかっていない借金については支払いが必要ですが、難しいときには債務整理もご検討ください。

【参考】亡くなった家族の借金が発覚、依頼から2週間で相続放棄をした事例

 

まずは弁護士にご相談ください

弁護士集合写真

ここまで、相続放棄の期限について解説してきました。

相続放棄をすれば、被相続人の借金を引き継がずにすみます。相続放棄の期限は相続開始を知った時から3 か月であり、期間内の判断が難しければ延長も可能です。基本的には、何もせずに期間を経過してしまうと相続放棄はできません。とはいえ例外的に相続放棄できるケースもありますので、すぐに諦めないでください。

 

亡くなった身内の借金の存在を知ってお困りの方は、弁護士法人山本総合法律事務所までご相談ください。

当事務所は、群馬県内でも規模が大きい弁護士事務所のひとつです。群馬・高崎に密着して、地域の皆様から相続に関する数多くの相談を受けて参りました。相続放棄につきましても、期限が過ぎていないときには延長の手続きや相続方法について、過ぎているときにも今からできる方法についてアドバイスいたします。

いずれにせよ、早めの行動が肝心です。「亡くなった人の借金を背負いたくない」「相続放棄の期限が過ぎたがよい方法はないか」とお悩みの方は、すぐにお問い合わせください。

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この記事を書いた人

代表弁護士 山本哲也

弁護士法人山本総合法律事務所

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