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未成年の子どもは相続人になれるのか?
- 執筆者弁護士 山本哲也
相続が発生した場合、その法定相続人は年齢にかかわらず相続人となることができます。
したがって、未成年の子どもであっても相続人となることができます。
本記事では、相続人に未成年がいる場合の遺産分割協議について解説します。
目次
相続人に未成年がいる場合の遺産分割協議の進め方
相続人に未成年がいる場合の遺産分割協議の進め方を確認しましょう。
特別代理人
未成年は、法律行為を一人で行うことができず、法律行為を行うには法定代理人の同意が必要です(民法第5条)。
そして、遺産分割協議も法律行為であるため、未成年は一人で遺産分割協議に参加することができないのです。
通常であれば、未成年の法定代理人は親権者です。しかし、たとえば夫婦のうち夫が死亡して妻とその未成年の子どもが相続人となった場合、本来、妻が子どもの法定代理人となりますが、相続においては代理人として同意することはできません。
なぜなら、妻はその相続において自らも相続人となっており、子どもの相続の意思決定に関与してしまうと、子どもと利益が相反してしまうためです。
この場合に妻が子供を代理して遺産分割協議をしてしまうと、その遺産分割協議は無効となってしまうのです。
そのため、この場合には、妻以外の者を、未成年の子供の特別代理人として選任する必要があります
誰が特別代理人になれるのか
特別代理人には、特に資格の制限がありません。
選任の申立をする際には候補者を指定することができ、相続人でない親族を候補者とすることが一般的には多いです。
特別代理人として適任な者が身近にいなかったり、候補者が家庭裁判所から適任でないと判断された場合には、家庭裁判所が弁護士等を特別代理人に選任することになります。
未成年の相続人が複数いる場合
相続人の中に未成年者が複数いる場合はどうでしょうか?
この場合、その未成年者同士の利害も対立することになるため、複数の未成年者について一人の特別代理人が就くわけにはいきません。
したがって、それぞれの未成年者について、一人ずつ特別代理人を選任する必要があります。
特別代理人の申し立てに必要な書類と手続き
特別代理人の選任の申し立てには、以下の書類を準備して家庭裁判所に提出する必要があります。
- 特別代理人選任の申立書
- 未成年者の戸籍謄本(全部事項証明書)
- 親権者又は未成年後見人の戸籍謄本(全部事項証明書)
- 特別代理人候補者の住民票又は戸籍附票
- 利益相反に関する資料(遺産分割協議書案、契約書案・抵当権を設定する不動産の登記事項証明書等)
- (利害関係人からの申立ての場合)利害関係を証する資料(戸籍謄本等)
申立書を提出すると、家庭裁判所による審理が行われます。
通常、1~3か月ほどで審理が完了し、特別代理人が選任されると、特別代理人選任審判書が発行されます。
この審判書には特別代理人が行うことができる行為が記載されます。ここに記載がない行為については行うことができず、その業務が完了すると特別代理人としての任務も終了することになります。
【参考】遺産分割協議
相続開始時に胎児だった場合の遺産相続
相続開始時に胎児だった場合(例えば、妻の妊娠中に夫が亡くなった場合等)、胎児に相続する権利は認められるのでしょうか。
胎児の相続について民法では、「胎児は、相続について、既に生まれたものとみなす」(民法第886条第1項)、「前項の規定は、胎児が死体で生まれたときは、適用しない」(民法第886条第2項)と定められています。
この規定の解釈についてはいくつかの考え方があります(判例では、胎児が生きて生まれてくることを条件に、胎児が生きて生まれてきたときに相続開始時に遡って権利能力を取得するという考え方がとられています。)が、いずれの考えによっても、胎児が生きて生まれるかが分かる前に遺産分割協議を行ってしまうと、胎児が生きて生まれてくるかどうかにより後で遺産分割協議をやり直さなければならない可能性があります(例えば、胎児を除いて遺産分割協議を行った後に、胎児が生きて生まれてきた場合には、遺産分割協議をやり直す必要があります)。
このため、通常は、胎児が出生するのを待って遺産分割協議を開始することが望ましいといえます。
両親が離婚している場合の未成年の遺産相続
両親が離婚している場合には注意すべき点があります。
夫婦のうち元夫が死亡し、元妻との間に未成年の子どもが2人いる例で考えます。
この場合、離婚している以上元妻は相続人となることができません。そのため、元妻は、未成年の子どもとの間では利益相反の関係にはなりません。
したがって、元妻は未成年の子どもの法定代理人として遺産分割協議を行うことができます。ただし、2人の子どもはそれぞれ互いに利害が対立するため、元妻は2人の法定代理人として遺産分割協議にかかわることはできません。
この場合、2人の子どものうち一方のみの法定代理人として関与し、もう一方の子どもについて特別代理人を選任するか、または2人についてそれぞれ別の特別代理人を選任する必要があるのです。
【参考】内縁の妻がいた場合や離婚調停の相続はどうなるのでしょうか
相続税法上の未成年者控除について
未成年者が相続する場合については、未成年者控除を利用することで相続税を抑えることができます。
未成年者控除は、未成年者の相続税額から一定額を差し引くことができるものです。
未成年者控除の額は、その未成年者が満18歳になるまでの年数1年につき10万円をかけた額です。年数の計算に当たって、1年未満の期間があるときは切り上げて1年として計算します。
例えば、未成年者の年齢が15歳9か月の場合は、満18歳になるまで2年と3か月あるため、3か月を切り上げて3年となり、30万円を相続税の額から控除することができます。
相続人に未成年がいる場合の遺産分割協議は弁護士法人山本総合法律事務所へ
以上で見てきたとおり、相続人に未成年者がいる場合、注意すべき点がさまざまあります。
未成年者の相続についてきちんとした理解がないと、遺産分割協議に不備が生じてしまうおそれもあります。
ポイントを確実におさえ、遺産分割協議を有効に進めていくために、ぜひ相続に詳しい弁護士法人山本総合法律事務所の弁護士にご相談ください。