公開日
最終更新日

会社経営者の相続ともめない遺言作成の重要性

会社の経営者にとって、相続に伴う遺産分割や後継者選定は、単なる財産の分配に留まらず、会社の存続とその将来に大きな影響を及ぼす重要な課題です。

適切な対策を講じなければ、相続時に会社が直面する可能性のあるトラブルは多岐にわたり、その影響は時に致命的なものとなります。

本稿では、会社経営者が相続時に直面し得るトラブルと、それを防ぐための遺言作成の重要性について、具体的な事例を交えながら解説します。

 

会社の相続で生じるトラブル

経営者の相続トラブル

経営者の相続において、最も懸念されるトラブルの一つは「自社株式の分散」です。

経営者が生前に遺言を残していない場合、相続財産は法定相続人による遺産分割協議によって決定されます。

この際、自社株式が複数の相続人に分散してしまうと、会社の重要な意思決定に影響が及び、経営の一貫性や迅速性が失われる危険性があります。

特に、株式が分散することで、経営方針が定まらず、結果として会社の成長が停滞するリスクが高まります。

 

次に、後継者が決まらない場合、事業の継続が困難になることも大きな問題です。

経営者が急逝した場合、後継者が未決定のままでは会社の方向性が不透明になり、社員や取引先に不安を与えます。

さらに、後継者が決まったとしても、その育成に十分な時間が取れなかった場合、会社の運営が滞り、最悪の場合、廃業に追い込まれる可能性すらあります。

また、相続税や贈与税が過度に重くのしかかることも、後継者にとっては大きな負担となります。

特に、自社株式の価値が高い場合、これらの税金が多額となり、十分な納税資金を確保できない後継者が会社を手放さざるを得ない状況に陥ることがあります。

 

さらには、経営者の交代に伴い、取引先が離れるリスクも無視できません。

長年の信頼関係に基づいて築かれてきた取引が、経営者の交代を機に見直されることは少なくありません。

特に、後継者が十分に信頼を得る前に経営権を引き継いだ場合、取引先が不安を抱き、他の会社に乗り換えてしまう可能性があります。

【参考】経営者の相続のポイントを弁護士が解説

 

トラブルを防ぐための遺言書作成の必要性

このようなトラブルを防ぐために、会社経営者が遺言書を作成することは極めて重要です。

遺言書があれば、法定相続分に関係なく、自身の意思に基づいた財産分配が可能となります。

特に、後継者に必要な株式や資産を集中させることで、経営の安定性を確保し、会社の未来を守ることができます。

 

遺言書の作成には、いくつかのメリットがあります。

まず、自社株式の分散を防ぎ、後継者に集中させることができる点です。

これにより、会社の意思決定が一元化され、経営の方向性がぶれることなく、安定した運営が可能となります。

 

さらに、相続争いの長期化による経営への悪影響を回避することも、遺言書作成の大きな利点です。

遺産分割を巡る争いが生じると、会社の運営に支障をきたすだけでなく、経営権の確立が遅れることで、会社全体が混乱する可能性があります。

しかし、遺言書があれば、そのような事態を未然に防ぐことができます。

【参考】遺言書の作成

 

遺言書作成の具体的なポイント

遺言書作成の具体的なポイント

経営者が遺言書を作成する際に注意すべきポイントはいくつかあります。

まず、遺言書の種類についてです。遺言書には「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」の三種類がありますが、経営者には公正証書遺言を強く推奨します。

公正証書遺言は、公証人が関与するため、遺言の有効性が確保されるとともに、偽造や隠匿のリスクも低くなります。

確実に経営を引き継ぐためにも、この形式を選ぶことが重要です。

 

次に、他の相続人の遺留分に対する配慮も必要です。後継者に株式や資産を集中させる場合、他の相続人の遺留分を侵害する可能性があります。

これにより、遺留分を侵害された相続人から法的請求が発生し、結果としてトラブルが生じることも考えられます。

そのため、生命保険などを活用し、遺留分侵害額請求に備えることも一つの対策となります。

【参考】遺留分と遺留分侵害額請求(遺留分減殺請求)について

【参考】遺留分を請求された時の対処方法〜支払い義務は?支払いが難しい場合の対応〜

顧問弁護士の活用による最適な遺言作成

相談風景

遺言書の作成には、経営者個人の財産状況だけでなく、会社の経営状況や財務状況も踏まえた上で行う必要があります。

これを適切に行うためには、企業法務に精通した専門家、特に顧問弁護士の力を借りることが効果的です。顧問弁護士は、日常的に会社の経営に関与しているため、企業の実情に即した遺言内容を提案してくれます。これにより、相続時に生じる可能性のあるリスクを最小限に抑えることができ、会社の存続と成長を確保することが可能です。

 

最後に

弁護士一同

会社経営者にとって、相続対策は単なる財産分割ではなく、会社の将来を見据えた重要な経営戦略の一部です。

適切な遺言書を作成し、後継者に経営をスムーズに引き継ぐための準備を整えることが、会社の存続と成長のために不可欠です。

経営者の皆様には、ぜひとも早めに相続対策に取り組んでいただきたいと考えます。

当事務所では、企業法務と遺産相続に精通した弁護士が、経営者の皆様の相続対策をサポートいたしますので、どうぞお気軽にご相談ください。

 

この記事をシェアする

XFacebookLine

この記事を書いた人

代表弁護士 山本哲也

弁護士法人山本総合法律事務所

代表弁護士 山本哲也

>>詳しくはこちら

初回相談60分無料

累計1,300件を超える相続に関する
ご相談をいただいております。
お気軽にご相談ください。

無料相談のご予約