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いらない土地の相続放棄はできますか?
- 執筆者弁護士 山本哲也
遺産に含まれる土地の扱いにお困りではないですか?
価値がない、管理できない、税負担が大きいなどの理由で、土地を相続したくないケースはたびたびあります。いらない土地があるときは相続放棄ができます。
ただし、3ヶ月以内に裁判所での手続きが不可欠です。また、相続放棄すると他の財産も相続できません。他にも、相続放棄する際には様々な注意点があります。
近年の法改正により、国にいらない土地を引き取ってもらえる「相続土地国庫帰属制度」も創設されました。状況や希望に応じてベストな方法をとりましょう。
本記事では、土地を相続放棄する際の注意点、誰も相続しなかった場合の行方、相続土地国庫帰属制度の概要などを解説しています。遺産の中のいらない土地にお困りの相続人の方は、ぜひ最後までお読みください。
目次
いらない土地や不動産は相続放棄できる?
遺産の中に不動産(土地・建物)があっても、以下のような理由で相続したくない場合があるでしょう。
- 立地が悪く価値がない
- 遠隔地や山林などで利用・管理ができない
- 価値があっても固定資産税等の負担が大きい
相続したくない不動産があるときは、相続放棄ができます。
相続放棄は、プラス・マイナスを問わず、亡くなった人の財産を一切引き継がない方法です。相続放棄をすれば財産を引き継がずにすむため、不動産から生じる様々な負担を免れられます。遺産に不要な土地が含まれている際には、相続放棄がひとつの選択肢になります。
【参考】不動産の遺産分割方法3種類
相続放棄における注意点
土地を引き継ぎたくない相続人にとって、相続放棄は有効な手段です。ただし、以下の点には注意してください。
3ヶ月以内に裁判所で手続きをする
相続放棄をするには、家庭裁判所での手続きが不可欠です。手続きは「自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヶ月以内」にしなければなりません(民法915条1項)。通常は、亡くなった時から3ヶ月以内に手続きをすませる必要があります。
期限を過ぎると相続放棄はできません。すぐに判断するのが難しいときは、期限延長の手続きも可能です。いずれにしても、何もせずに時が経過しないように注意してください。
【参考】相続放棄の期限である 3 か月を過ぎてしまっても放棄できますか?
他の財産も相続できない
相続放棄はすべての財産を引き継がない方法です。土地以外の財産も一切相続できません。他の財産が欲しい場合には適さないといえます。
撤回できない
いったん相続放棄の手続きをすると、撤回はできません(民法919条1項)。後から欲しい財産が見つかっても引き継げなくなってしまいます。相続財産を十分に調査したうえで実行するようにしましょう。
遺産の処分等をすると単純承認とみなされる
一定の行為をすると法律上「単純承認」したとみなされ、通常通り相続をする必要があります(民法921条)。相続放棄をしたくてもできません。
法律上単純承認とみなされるのは、たとえば以下のケースです。
- 土地上の建物を解体した
- 預金を引き出して自分のために使った
- 3ヶ月の申告期限を過ぎた
- 遺産を隠した
本人にそのつもりがなくても、相続放棄ができなくなるケースがあります。遺産に不用意に手をつけないように注意してください。
【参考】限定承認と単純承認
他の相続人や次順位の相続人に連絡する
相続放棄をしても、効果は自分にしか及びません。他の相続人に負担がかかってしまうため、連絡しておくようにしましょう。
また、相続人全員が相続放棄をした結果、次順位の相続人が相続権を得る場合があります。よくあるのは、子全員が相続放棄をして、被相続人の両親も既に他界しているために、兄弟姉妹が相続権を得るケースです。
何も言わずに相続放棄をすると、親族間で問題が生じるおそれがあります。トラブル防止のために、相続権を持つ人には自身が放棄する旨を伝えてください。
【参考】相続人の順位とは
いらない土地や不動産をだれも相続しなくなったらどうする?
次順位の人も含めて、相続人全員が相続放棄する場合があります。誰も相続する人がいなくなったときは、家庭裁判所への申立てにより「相続財産清算人」を選任し、管理・処分を行います。
相続財産清算人は、財産管理、債権者への弁済、残った財産の国庫への帰属などを担う人です。2023年の法改正前は「相続財産管理人」という名称でした。相続財産清算人には弁護士などの専門家が就任するケースが多いです。
相続財産清算人は、自動的には選任されません。利害関係人による申立てが必要です。誰も相続しなかった土地・建物は、手続きを通じて他に取得する人がいなければ、最終的には国のものになります。
【参考】相続放棄すると空き家はどうなりますか?相続土地国庫帰属法とは
相続土地国庫帰属制度とは?
他の財産が欲しいなどの理由で相続放棄ができず、いらない土地をやむを得ず相続する場合もあるでしょう。相続した土地を手放したいときに利用できるのが「相続土地国庫帰属制度」です。
相続土地国庫帰属制度とは、一定の要件を満たした土地について、お金を払って国に引き取ってもらえる仕組みです。2023年4月にスタートしました。制度の開始以前に相続した土地でも申請が可能です。
相続土地国庫帰属制度を利用すれば、相続放棄せずに他の財産を引き継げるほか、売却先を自分で探さずにすむメリットがあります。
ただし、土地を国に引き渡すためには、建物がない、担保権が設定されていないなど、所定の要件を満たさなければなりません。また、審査手数料や負担金を支払う必要があります。
制度は始まったばかりですが、状況に応じて利用をご検討ください。
相続放棄は弁護士にご相談ください
ここまで、いらない土地の相続放棄について解説してきました。
相続すると負担になる土地があるときには、相続放棄が可能です。しかし、相続放棄をすれば他の財産も引き継げなくなってしまいます。相続土地国庫帰属制度も含めて、ベストな方法を検討する必要があります。
遺産に不要な土地があってお困りの方は、弁護士法人山本総合法律事務所までご相談ください。
当事務所は、群馬県内でも規模の大きな弁護士事務所のひとつです。群馬・高崎に密着して、相続に関する数多くの相談を受けて参りました。不要な土地がある場合にも、状況やご希望に応じて相続放棄すべきかを検討し、裁判所での手続きも代わりに行います。万が一トラブルが発生した場合でも迅速な対応が可能です。
いらない土地を相続放棄するかお悩みの方は、お気軽にお問い合わせください。