内縁の妻がいた場合や離婚調停中の相続はどうなるのでしょうか?
- 執筆者弁護士 山本哲也
目次
1.内縁の妻がいた場合
(1)内縁の夫・妻には相続権が無い
法律上、内縁(事実上の夫婦関係はあるが婚姻届が出されていない状態)の配偶者には相続権が認められておりません。
したがって、内縁の妻は、原則として被相続人である内縁の夫の財産を相続によって取得することはできません。
被相続人が死亡した場合、配偶者は常に相続人となります(民法890条)。
配偶者とは、法律上の(婚姻届を出している)夫・妻のことです。
配偶者として相続人となるためには、法律上の婚姻関係にある必要がありますから、配偶者と事実上同一の地位を有していても、内縁配偶者(婚姻届を提出していないものの夫婦と同様の生活実態を有する者)には相続権がありません。
ただし、以下の様な例外があります。
(2)特別縁故者であれば相続が可能
被相続人が死亡したときに相続人がいない場合には、被相続人の財産を受け取る人がいないので、この財産は国のものになってしまいます。しかし、被相続人と生計が同一であったり、被相続人の療養看護をしたりなど、生前に被相続人と特別な関係にあった人(これを「特別縁故者」といいます。)は、相続財産の一部または全部を受け取ることができます。内縁配偶者として、被相続人に長年連れ添い、その最後まで面倒を見てきた人ならば、特別縁故者に該当する可能性は高いでしょう。
ただし、特別縁故者として財産を受け取るためには、一定の手続を踏む必要があります。具体的には、相続人がいないことが確定してから3カ月以内に、家庭裁判所に対して相続財産の分与を請求し、財産を与えられることが相当であると認められなければなりません。
(3)内縁配偶者が被相続人の住居に住み続ける場合
ア 被相続人がアパートなどの住居を借り、内縁の配偶者と同居していた場合
この場合、被相続人に相続人がいない場合に限り、同居していた内縁の配偶者は、住居に住む権利を被相続人から承継することができます(借地借家法36条1項)。もっとも、居住者は、被相続人の権利だけでなく義務も承継することになるので、賃貸人に対して賃料を支払う義務も発生します。
被相続人に相続人がいる場合には、内縁の配偶者は、相続人が承継した賃借権を援用し、これまでと同様の家に居住し続けることができます(最判昭和42年2月21日)。
イ 被相続人が所有する住居で、被相続人と内縁の配偶者が同居していた場合、
内縁の配偶者は当該住居の所有権を相続することはできませんが、相続人から内縁の配偶者に対する建物明渡請求が権利濫用であるとされ、内縁の配偶者が当該住居にすみ続けることができる場合があります(最判昭和39年10月13日)。
なお、内縁の配偶者には、配偶者居住権(民法1028条)や配偶者短期居住権(1037条)は認められません。
ウ 被相続人と内縁の配偶者が同居する住居を共有していた場合
この場合、内縁の配偶者は、住居の共有持分を有しているため、被相続人の死亡後も同じ住居に住み続けることができます。また、内縁の夫婦間において、一方が死亡した後は他方が住居を単独で使用する旨の合意が成立したものと推認されるため、内縁の配偶者は、その合意によって発生した義務を承継した相続人に対し、住居の使用料を支払う必要がありません(最判平成10年2月26日)。
(4)遺言があった場合
被相続人が、生前に内縁の配偶者に対して財産を与える旨の遺言を残していれば、内縁の配偶者であっても、被相続人の財産を取得することができます。
被相続人が、ある特定の人に財産を与える旨の遺言を残していれば、被相続人が死亡した後、その人は被相続人から財産を受け取ることができます。
遺言をする場合は、法定相続人だけでなく、内縁の配偶者など、本来であれば相続人ではない人を受取人に指定することができるためです。
他の相続人の遺留分を侵害している場合は?
ただし、内縁の配偶者が財産を取得したことにより、他の相続人の遺留分を侵害した場合には、侵害額に相当する金銭を支払う必要があります。他に相続人がいる場合、一定の相続人には、最低限の遺産を確保する権利(これを「遺留分」といいます。)が認められているからです。
したがって、内縁の配偶者に対して財産を与える旨の遺言を作成する場合には、相続人の遺留分を侵害しないようにしたり、遺留分侵害額請求を受けても支払いをすることができるよう気を付けて遺言を作成する必要があります。
(5)まとめ
まず、内縁の配偶者に相続権はありません。しかし、他に相続人がいない場合には特別縁故者の手続きを踏むと財産の取得が可能です。
他の相続人がいる場合でも、遺言に「内縁の配偶者に財産を相続させる」旨の記載があれば相続が可能です。ただし、他の相続人の遺留分を侵害した場合、その相続人に対し、遺留分の侵害額に相当する金銭を支払う必要があります。
2.法律上の配偶者がいる場合
A. 配偶者は常に相続の資格を持ちます(民法890条)。
法律上の配偶者であれば、仮に、別居中であっても、被相続人である夫または妻が死亡した時に離婚さえしていなければ相続の対象となるのです。
3.不倫相手がいた場合
不倫関係にある女性に財産を渡すことを内容としていることを理由に直ちに遺言が無効とされるわけではありません。
しかし、民法90条は、「公の秩序又は善良の風俗に反する法律行為は、無効とする」と定めています。これを今回のケースで言えば、日本の法律では、夫婦は互いに貞操を守る義務を負っており、法律上の重婚も禁止されていますから、不倫関係というのは、日本における婚姻秩序や性道徳に反する行為と考えられます。
したがって、不倫関係にある女性に財産を渡すことを内容とする遺言が、場合によっては、公の秩序や善良の風俗に反するとして無効とされる余地があります。
具体的には、遺言が、不倫関係の維持継続を目的としてされたものか、遺言者に生計を頼っていた不倫相手の生活を保護することを目的としてされたものか、遺言の内容が相続人らの生活基盤を脅かすことがないか、といった事情を総合的に考慮して、遺言が無効かを判断することになります。
4.不倫相手との間に子供ができた場合
いわゆる愛人の子は、そのままでは、生物学的意味における父との間に法律上の親子関係がないので相続権はありません。
しかし、生物学的意味における父が認知すれば、その者と愛人の子の間に法律上の親子関係が認められますので、相続権が発生します。
認知とは、嫡出でない子(非嫡出子)について、父子関係の存在を認める旨を表示をすることをいいます(民法779条)。
認知は、父もしくは子の本籍地または父の所在地のいずれかの市区町村役場に認知届を提出して、おこなうことになります。
5.相続前に専門家に相談を
内縁の配偶者は相続人にはなりません。そこで、事前に遺書の作成を行い、内縁の配偶者に財産を残したり、生前に贈与するなどして、未然にトラブルを回避するような工夫が必要でしょう。
生活を共にしてきた内縁の配偶者が相続トラブルに巻き込まれることを防ぐために、なるべく早期に弁護士などの専門家に相談されることをおすすめします。
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