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相続紛争とは?トラブルになりやすいケースや紛争を起こさない方法について弁護士が解説
- 執筆者弁護士 山本哲也
「遺産相続でトラブルになるのはどういった事案が多いのだろう?」
という疑問をお持ちではありませんか?
遺産相続が起こると、相続トラブルが発生するケースが多々あります。
ただし相続トラブルにはパターンがあるので、事前に知っておくと効果的に予防できます。
また実際に相続紛争が生じてしまった場合の解決方法も押さえておきましょう。
この記事ではよくある相続トラブルのパターンや対処方法について、弁護士がわかりやすく解説します。遺産相続でトラブルを起こしたくない方、トラブルに巻き込まれてしまった方はぜひ参考にしてみてください。
目次
相続トラブルは他人事ではない
遺産相続トラブルというと「うちとは関係がない」と考える方も少なくありません。
しかし今や、誰に取っても遺産相続トラブルは無関係ではありません。
相続トラブルが起こると、案件は家庭裁判所の遺産分割調停へ持ち込まれるケースが多数です。裁判所の司法統計によると、令和2年には家庭裁判所で遺産分割の事件数が10,303件にものぼります。
遺産分割事件数(家庭裁判所別)
また遺産相続トラブルは、一部の富裕層に限った問題でもありません。
むしろ遺産額が5,000万円以下の案件だけで70%以上となっており、1,000万円以下の案件だけでも3割程度となっています。
遺産分割事件 ― 遺産の内容別
以上からすると、むしろ富裕層より中流家庭での方が遺産分割に関するトラブルは多いといえるでしょう。
遺産相続トラブルは、誰にとっても他人事ではありません。
相続で紛争になりやすいケース
遺産相続で紛争になりやすいのは、以下のような場合です。
1.遺産目録がない
遺産の目録がない場合、遺産相続トラブルが生じるケースがよくあります。
遺産目録とは、遺産の一覧表です。
一覧表がない場合、相続人にとってはどういった遺産があるのかがわかりません。他の相続人に対し「隠しているのではないか?」などと疑心暗鬼になってしまう可能性があります。
争いになると遺産の範囲を確定できないため、いつまでも遺産分割競技を始められないケースも少なくありません。
【関連リンク】財産目録(遺産目録)の作り方
2.遺言書が不平等
不平等な遺言書が遺されている場合にも遺産相続トラブルが起こりやすいといえます。
特定の相続人にのみ高額な遺産が遺されると、他の相続人は遺産を受け取れなくなってしまいます。そうなると、当然他の相続人は不満を持つでしょう。
「遺留分侵害額請求」が行われる可能性が高まります。
遺留分とは、兄弟姉妹以外の法定相続人に認められる最低限の遺産取得割合です。遺言によって遺留分を侵害された相続人は、侵害者へ遺留分侵害額請求を行って「遺留分侵害額」という金銭を取り戻せるのです。
不公平な遺言書があると遺留分侵害額請求が起こってしまう可能性があるので、遺言書を書き残すときには遺留分に配慮しなければなりません。
【関連リンク】遺留分の基本
3.遺産のほとんどが不動産
遺産の内容がほとんど不動産な場合にも遺産相続トラブルが起こりやすくなります。
不動産は分けにくいうえ、評価も難しいからです。
たとえば預金や現金であれば、法定相続分に従って分配しやすいでしょう。しかし土地や建物の場合、割合的に分けるのは簡単ではありません。かといって1人の相続人が相続すると不公平になってしまいます。
また代償分割するとしても、不動産の評価額が問題となります。不動産の価格は一律で決まるものではないので、評価額を巡ってトラブルになるケースも多いのです。
遺産の多くが不動産な場合、相続紛争が生じやすいので関係者の方は十分に対策しておく必要があります。
【関連リンク】不動産相続でトラブルになる7つのパターンと解決方法
4.相続人同士の関係がほとんどない
相続人間の関係が薄い場合にもトラブルが起こりやすくなります。
相続が開始すると、相続人が全員参加して遺産分割協議をしなければなりません。しかし相続人相互の関係性が薄い場合、スムーズに遺産分割協議を行うのは難しくなるでしょう。声をかけても無視する相続人もいます。
こういったケースでは、遺言書を作成しておくべきです。遺言書ですべての遺産相続方法について指定しておけば、相続人同士で連絡を取り合って遺産分割協議を行う必要がありません。
【関連リンク】遺言書の作成をおすすめする理由
5.介護した相続人がいる
被相続人を献身的に介護した相続人がいる場合にも、遺産相続トラブルが起こりやすくなります。
介護した相続人は「寄与分」を主張しますが、他の相続人が認めないケースが多いからです。
寄与分とは、相続人が遺産の維持や増加に特別な貢献をした場合に認められる、多めの遺産取得割合です。
被相続人を献身的に介護した相続人がいると、被相続人の財産から介護費用を払わなくて良いので遺産の減少を免れます。そこで介護した相続人に寄与分が認められる可能性があるのです。
ただどの程度の介護をすれば寄与分が認められるのか、寄与分をどのように評価すべきかについては、専門的な知識がないと判断が困難となっています。
そこで相続人間で「寄与分がある」「寄与分は認めない」と争いになり、トラブルに発展してしまいます。
【関連リンク】寄与分とは
6.生前贈与を受けた人がいる
相続人の中に生前贈与を受けた人がいる場合にも、相続紛争が起こりやすくなります。
生前贈与は「特別受益」になるからです。
特別受益とは、相続人が被相続人から受けた特別な利益です。遺贈や贈与によって財産を受け継いだ場合に特別受益が成立する可能性があります。
特別受益が認められると、遺産分割の際にその相続人の取得割合を減らす「特別受益の持戻計算」を行って相続人の遺産取得割合を調整します。
しかし現実には特別受益を受けた相続人がいても否定するケースが多く、一方で他の相続人は特別受益の持戻計算を適用しようとするので、トラブルになりがちです。
【関連リンク】特別受益とは
7.被相続人が再婚していて前婚の子どもがいる
被相続人が再婚していて前婚の際の子どもがいる場合にも、相続トラブルが起こりやすくなります。前婚の際の子どもにも、死亡時の家族の子どもと同じだけの遺産相続権が認められるからです。
前婚の際の子どもには権利があるので遺産を受け取ろうとしますが、死亡時の家族は前婚の際の子どもに遺産を渡したくないと考えるので、トラブルになりやすい状況に陥ります。
8.認知された子どもがいる
被相続人に認知された婚外子がいる場合にも、遺産相続トラブルが起こりやすくなります。
生前に認知されておらず、死後に子どもの方から認知請求した場合も同様です。
認知された子どもにも死亡時の家族と同様に遺産相続権が認められるので、立場の違う相続人らが対立し、トラブルを起こしてしまうのです。
9.被相続人に内縁の配偶者がいる
被相続人に内縁の配偶者がいた場合にも相続トラブルが起こるケースが多々あります。
内縁の配偶者には相続権がありません。被相続人名義の預金や不動産を一切相続できないのです。そうなると、子どもなどの相続人が内縁の配偶者へ自宅からの退去請求をしたり、預金を引き継いでしまったりして内縁の配偶者の生活が脅かされるケースもあります。
【関連リンク】内縁の妻がいた場合や離婚調停中の相続はどうなるのでしょうか?
10.遺産が使い込まれている
被相続人名義の預金などの遺産が使い込まれた場合にも、トラブルが起こるケースが多々あります。
遺産が使い込まれると、他の相続人は当然、使い込んだ相続人へ返還を求めます。ところが使い込んだ相続人が使い込みを否定したり返還を拒んだりするので、トラブルになってしまうのです。
【関連リンク】預金使い込みの解決方法
遺産相続トラブルにならないための対応方法
遺産相続に関するトラブルが起こらないためには、被相続人の生前に対策を行っておくべきです。以下で遺産相続トラブルを起こさないための対処方法をご紹介します。
1.遺言書を作成する
まずは公正証書で遺言書を作成するよう推奨します。公正証書で作成された遺言書を「公正証書遺言」といいます。公正証書遺言があると、被相続人本人が遺産の分け方などを指定できるので、相続人たちが遺産分割協議を行う必要がありません。遺産相続トラブルの多くは遺産分割協議を起点にして起こるので、遺産分割協議を行わないで済むと多くの相続紛争を避けられます。
遺言書に遺産目録をつけておけば、遺産の内容も明確になって紛争を避けやすくなるでしょう。遺言書では、特別受益の持戻計算を行わないとする免除の意思表示などもできます。
【関連リンク】遺言の種類と特徴
公正証書遺言での作成がおすすめ
遺言書を作成するときには、自筆証書遺言ではなく公正証書遺言を推奨します。その方が無効になりにくく紛失や偽造などの問題も生じないからです。
相続人間で「遺言書は無効だ」と主張されるトラブルも発生しにくくなりますし、遺言内容を実現できる可能性が高まります。
遺言書を作成した方が良いケース
基本的にはすべてのケースで遺言書を作成すべきです。
特に以下のような場合、遺言書を作成するよう強く推奨します。
- 遺産の多くが不動産
- 相続人同士が疎遠である
- 相続人同士の仲が悪い
- 介護した相続人がいる
- 生前贈与した相続人がいる
- 前婚の子どもと死亡時の家族がいる
- 認知した子どもがいる
- 内縁の配偶者がいる
【関連リンク】遺言でできる事とは
2.遺言執行者を指定する
遺言書を作成する際には、遺言執行者を指定しましょう。遺言執行者とは、遺言内容を実現する人です。
遺言執行者がいると、預金払い戻しや不動産の登記を遺言執行者ができるので、相続人たちに手間をかけさせません。遺言書が無視されて遺言内容が実現されない事態も防げます。
ただし相続人から遺言執行者を選任すると不公平感が高まるケースがあります。遺言執行者は弁護士などの専門家から選任するのが良いでしょう。
3.遺留分を侵害しないようにする
遺言書を作成する場合、相続人の遺留分を侵害しないように注意しましょう。
遺留分を侵害すると、遺留分侵害額請求が行われ、遺言書がかえってトラブルのもとになってしまうおそれがあります。
生前贈与する場合も同様です。生前贈与も「相続開始前10年」に行われた場合には遺留分侵害額請求の対象になる可能性があるので、他の相続人との公平性を考えながら行いましょう。
【関連リンク】遺留分の請求をされないために
4.民事信託を利用する
民事信託を利用して相続トラブルを防ぐ方法もあります。
民事信託とは、信頼できる家族に財産を託して受益者のために管理してもらう契約です。生前の財産管理にも適用できますし、死後の財産管理方法も指定できます。
たとえば遺産の中に投資用の不動産がある場合、信頼できる親族を受託者として相続人全員のために不動産を管理させる方法があります。これにより賃料を各相続人へ共有持分とおりに分配すれば、不動産を遺産分割することによって生じるトラブルを避けやすくなります。
他にも民事信託の活用例は多数あります。検討している方はぜひ弁護士へご相談ください。
5.遺産目録を作成しておく
遺産相続トラブルを防ぐには、遺産目録を作成しましょう。
どこにどういった遺産があるのかを被相続人自身が明らかにしておけば、相続人らが「他にも遺産があるのではないか?」と疑心暗鬼になる可能性が低くなります。
遺産目録はそれ自体を単独で作成しておいても構いませんが、遺言書に添付しておくと相続人に発見されやすくなります。またエンディングノートを作成する際に、遺産目録を添付してもかまいません。
【関連リンク】財産目録(遺産目録)の作り方
相続で紛争になった際の対処法
遺産相続で紛争が生じたら、紛争の種類によって対応方法が異なります。
以下では相続で紛争になった場合の対処方法をパターン別にお伝えします。
1.遺産分割協議のトラブル
遺産分割協議がまとまらない場合、家庭裁判所で遺産分割調停や審判を行う必要があります。
まずは遺産分割調停で話し合いを試み、合意できなければ審判になって裁判官が遺産分割の方法を指定するのが一般的です。
2.遺留分に関するトラブル
遺留分に関するトラブルが起こって話し合いでは解決できない場合、家庭裁判所で遺留分侵害額に関する調停を申し立てなければなりません。
調停でも合意できない場合には、遺留分侵害額訴訟を提起して訴訟内での解決を目指します。最終的に裁判官が遺留分侵害額請求の可否や、遺留分侵害額の金額を決定して侵害者へ支払い命令を下します。
3.遺産の使い込みに関するトラブル
遺産の使い込みが行われた場合、相続開始後の使い込みだけであれば遺産分割協議や調停、審判で解決できます。
一方、相続開始前の使い込みがある場合には、遺産分割協議等による解決が難しくなります(使い込んだ本人の同意がないと遺産分割の手続内で解決できません)。その場合、地方裁判所で不当利得返還請求や不法行為に基づく損害賠償請求を行う必要があります。
【関連リンク】使い込まれた預金を返還請求する手順・流れ
4.遺産隠しや相続人の範囲に関するトラブル
ある相続人が遺産を隠している場合、まずは遺産の内容を調査しなければなりません。
ある財産が遺産に入るかどうか争われる場合には、遺産内容を確定する裁判を起こす必要があります。
また相続人の範囲について争いが生じるケースもあります。ある人が本当に相続人かどうか争われる場合にも、相続人であることを確認するための裁判をしなければなりません。
5.弁護士に相談する
上記のような遺産相続に関するトラブルが発生したら、弁護士へ相談しましょう。弁護士であれば状況に応じた手続きを選択し、相続紛争を解決する方向へ導けます。
自分たちだけで話し合っても解決できないケースでも、弁護士が代理人として交渉すれば、遺産相続をスムーズに進められるケースも少なくありません。
遺産相続トラブルが起こって困ったときには、相続関係に力を入れている弁護士へ相談しましょう。
【関連リンク】相続問題を弁護士に依頼すべき理由 /相続を弁護士に相談するタイミング
相続問題を弁護士に相談するメリット
遺産相続に関するもめごとを弁護士に相談すると、以下のようなメリットがあります。
1.法的に正しいアドバイスを受けられる
まずは法的に正しいアドバイスを受けられることが大きなメリットといえます。
遺産相続トラブルの種類は非常に多く、ケースによって異なる対処方法をとる必要があります。専門知識がないと、どのように対応してよいかわかりにくいでしょう。
弁護士であれば、その事案で最適と考えられる解決方法を提示できます。
代理人として解決に向けた活動を行うことも可能です。
他の相続人ともめてしまったり連絡を取れなかったりして困ったときには弁護士へ相談しましょう。
【関連リンク】遺産相続を弁護士に相談すべき11の状況
2.交渉、調停や裁判の代理人を依頼できる
弁護士には相手との交渉、調停や裁判、審判などの手続の代理人を依頼できます。
弁護士が代理人になれば、法的な観点から適切に交渉や裁判手続を進めるので、スムーズに解決しやすくなるものです。
相続人が自分で相続紛争について調べたり対応したりする手間も省けます。
忙しくしている方や自分で対応するのに限界を感じた方は、早めに弁護士へ相談するのが良いでしょう。
【関連リンク】相続を相談・依頼する弁護士の選び方
3.感情的な対立を避けられる
遺産相続トラブルでは、どうしても親族同士が感情的に対立してしまうケースが多数です。そうなると、ただでさえ解決しにくい相続紛争がさらに解決されにくくなってしまいます。
そこで弁護士という法律の専門家が第三者として関与すれば、相続人同士の感情的な対立を避けやすくなります。
結果的に紛争が解決されやすくなるメリットがあるといえるでしょう。
4.ストレスが軽減される
遺産相続トラブルに対応するには大変なストレスがかかります。
「親族同士のもめごと」というだけでも精神的な負担となる上、トラブルが3年以上長引いて当事者が疲弊してしまうケースなども少なくありません。
弁護士に依頼してしまえば自分で対応する必要がないので、ストレスが大きく軽減されます。
5.生前の対策も相談できる
生前に弁護士に相談すると、遺言書作成や遺言執行者への就任などを依頼できます。
財産管理に関して不安があれば、成年後見制度や民事信託などの利用も相談可能です。
生前の相続対策を相談できる点も弁護士を利用するメリットといえるでしょう。
【関連リンク】相続を弁護士に相談するタイミング
6.山本総合法律事務所に相談するメリット
山本総合法律事務所は、群馬県で遺産相続案件に力を入れている弁護士事務所です。
8名の弁護士が日々相続に関する研鑽を重ね、ひとつひとつの事件に真摯に取り組んでいます。
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