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遺言書だけでは足りない?遺言執行者の必要性
- 執筆者弁護士 山本哲也
遺言執行者とは、遺言者の死後に遺言内容を実現する役割を担う人のことをいいます。
遺言執行者の選任は、必ず必要になるものではありませんが、遺言内容に一定の時効が記載されている場合には、遺言執行者の選任が必要になります。
相続が発生したときは、遺言執行者が必要なケースであるかを判断した上で、必要に応じて遺言執行者の選任を行うようにしましょう。
今回は、遺言執行者の選任が必要になるケースと遺言執行者を選任する方法・流れについて、相続問題に詳しい弁護士が解説します。
目次
遺言の執行者とは
遺言執行者とは、遺言者の死後に遺言内容を実現する役割を担う人をいいます。
遺言は、遺言者の死亡により効力が発生しますので、遺言者自身では、遺言内容の実現を図ることができません。
また、遺言を残しても相続人同士で争いが生じてしまうとスムーズな遺言内容の実現が困難です。
そこで、遺言者の意思に従って、適切に遺言内容実現するために指定・選任されるのが「遺言執行者」です。
遺言執行者は、遺言により指定することができますが、指定がない場合には利害関係人の請求により家庭裁判所が選任することができます。
遺言執行者の選任が必要になるケース
遺言執行者は、必ず選任しなければならないわけではありません。しかし、以下のようなケースでは、遺言執行者の選任が必要になります。
遺言により認知を行うケース
認知とは、婚姻関係にない男女間に生まれた子どもを自分の子どもであると認めることをいいます。
認知により親と子の間には法律上の親子関係が成立しますので、扶養義務や相続権が発生します。
親による認知の方法には、認知届による任意認知と遺言による遺言認知の2つの方法があります。
このうち、遺言による認知を行う場合には、遺言執行者による認知の届出が必要になります。そのため、遺言内容に認知が含まれている場合には、必ず遺言執行者を選任しなければなりません。
【参考】内縁の妻がいた場合や離婚調停中の相続はどうなるのでしょうか?
遺言により相続人廃除を行うケース
相続人廃除とは、一定の条件を満たす相続人の相続権を剥奪する制度です。具体的には、以下の要件を満たす相続人が相続人廃除の対象になります。
- 被相続人に対して虐待をした
- 被相続人に対して重大な侮辱を加えた
- 推定相続人によるその他の著しい非行があった
相続人廃除は、遺言者が生前に家庭裁判所に申立てをして行うことができますが、遺言により相続人廃除をすることも可能です。
ただし、遺言により相続人廃除をするには、遺言執行者による家庭裁判所への申立てが必要になります。
そのため、遺言内容に相続人廃除が含まれている場合には、必ず遺言執行者を選任しなければなりません。
【参考】相続人の順位とは
遺言執行者を選ぶ方法と流れ
遺言執行者の選任が必要なケースでは、以下のような方法・流れで遺言執行者の選任を行います。
必要書類の準備
遺言執行者の選任が必要になったときは、まずは、以下の書類を準備します。
- 家事審判申立書
- 遺言者の死亡の記載がある戸籍謄本(全部事項証明書)
- 遺言執行者候補者の住民票または戸籍附票
- 遺言書写しまたは遺言書の検認調書謄本の写し
- 利害関係を証する資料(遺言者との関係がわかる戸籍謄本等)
家庭裁判所への申立て
必要書類が準備できたら遺言者の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に遺言執行者選任の申立てを行います。
遺言執行者選任の申立てができるのは、利害関係を有する以下のような人になります。
- 相続人
- 遺言者の債権者
- 遺贈を受けた人
なお、遺言執行者の選任申立てにあたっては、執行対象となる遺言書1通につき収入印紙800円分と連絡用の郵便切手(金額については裁判所に要確認)が必要です。
【参考】遺言書の作成
遺言執行者候補者に対し照会書の送付
遺言執行者選任申立てが受理されると、家庭裁判所から遺言執行者候補者に対して、照会書が送付されます。
照会書は、遺言執行者候補者に就任の意思があるか、欠格事由に該当する事由があるかどうかを確認するのが目的です。遺言執行者候補者は、家庭裁判所から照会書が届いたら、期限までに回答を記入し、返送をしなければなりません。
遺言執行者選任の審判
家庭裁判所は、申立書や照会書の内容を踏まえて審理を行い、遺言執行者選任の審判を行います。審判に対する不服申し立てがなければ、審判は確定し、遺言執行者は、遺言内容の実現に向けて職務を開始します。
【参考】公正証書遺言作成のポイント|遺言があってももめるケース
相続対策は弁護士にご相談ください
相続内容に認知や相続人廃除が含まれている場合には、遺言執行者の選任が必要になりますので、相続人に負担をかけないようにするためにも、遺言により遺言執行者を指定するのがおすすめです。
また、遺言執行者の選任が必要になる場合でなかったとしても、遺言により遺言執行者を指定することもできますので、スムーズに遺言内容を実現するためにも、遺言執行者を指定しておいた方がよいでしょう。
遺言執行者は、未成年者と破産者以外であれば誰でもなることができますが、遺言内容の実現にあたっては、法的知識や経験が必要になりますので、専門家である弁護士を指定するべきです。相続対策として遺言書の作成をお考えの方は、相続問題に詳しい山本総合法律事務所までお気軽にご相談ください。