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公正証書遺言作成のポイント|遺言があってももめるケース

公正証書遺言作成のポイント|遺言があってももめるケース

遺言を作成すれば、遺産の分け方を指定できます。とりわけ、公正証書遺言を作成すれば無効となるリスクが非常に低く効果的です。

とはいえ、認知症であった、遺留分を侵害していたなどの理由で、公正証書遺言があっても結果的にもめてしまう可能性はゼロではありません。もめた際には調停や訴訟などに発展する場合もあります。できるだけもめないようにするには、入念な事前準備が必要です。

本記事では、公正証書遺言について、メリット・デメリット、作成の流れ、もめるケース、もめたときの解決法や事前にできる対策などを解説しています。公正証書遺言の作成を考えている方は、ぜひ最後までお読みください。

 

公正証書遺言とは

公正証書遺言とは?

公正証書遺言とは、公証役場において、公証人が関与して作成される遺言です。法律のプロである公証人が関わっているため、公正証書遺言を作成しておけば死後に争いになるリスクを下げられます。

公正証書遺言の主なメリット・デメリットは以下の通りです。

【メリット】

  • 遺言者が求める内容を法的に正しく記載してもらえる
  • 形式違反などで無効になるリスクがほとんどない
  • 自分で書く必要がない
  • 偽造や紛失の心配がない
  • 検認手続きが不要

【デメリット】

  • 証人を2人用意しなければならない
  • 費用がかかる
  • 時間や手間がかかる

費用や手間はかかってしまいますが、思い描いている内容の遺言を確実に作成できる点で公正証書遺言は有用といえます。

【参考】公正証書の作成方法

 

公正証書遺言を作成する流れ

公正証書遺言を作成する流れ

公正証書遺言を作成する流れは以下の通りです。

内容を決める

まずは、遺言に記載する内容を決めなければなりません。前提として、相続人が誰であるかを確認し、自身の財産を洗い出しておく必要があります。

遺言の内容は基本的に自由です。財産をどのように分けるかを決められます。ただし、遺留分には配慮するのが望ましいです。

必要書類・証人を準備する

公正証書遺言を作成する際には、以下の書類を提出しなければなりません(参考:日本公証人連合会サイト)。

  • 遺言者本人の印鑑登録証明書
  • 遺言者と相続人の関係がわかる戸籍謄本等
  • (相続人以外に遺贈するとき)受贈者の住民票等
  • 不動産の登記事項証明書、固定資産評価証明書
  • 預貯金通帳

状況によって必要書類は異なるため、弁護士や最寄りの公証役場にお問い合わせください。

また、作成の際には証人(2名)の立ち会いが不可欠です。ご自身で用意するのが難しい場合には、依頼した専門家や公証役場に紹介してもらう方法もあります。

【参考】遺言の種類と特徴

公証人と事前調整をする

一般的には、遺言の内容について公証人と事前に打ち合わせを行います。必要書類を提出するとともに希望を伝え、遺言の文言を調整します。

遺言を作成する

事前に予約したうえで、実際に公証役場に出向いて遺言を作成します。通常は公証役場で行いますが、病気などの理由で難しい場合には、自宅や病院に出張で来てもらうことも可能です。

当日は、証人立会いのもと、公証人に遺言の内容を伝え、公証人が文面を読み聞かせます。内容に間違いがなければ、遺言者・証人・公証人が署名押印を行い、遺言書が完成します。

公正証書遺言でもめるケース

公正証書遺言でもめるケース

公正証書遺言を作成すれば、法的なリスクは大幅に軽減できます。とはいえ、トラブルになる可能性はゼロではありません。

公正証書遺言でもめるケースとしては、以下が挙げられます。

遺言時に認知症であった疑いがある

遺言を有効に作成するには、遺言の内容や生じる結果を理解する能力(遺言能力)を有していなければなりません。遺言時に認知症であると、後から「遺言能力がなく無効だ」と主張する人が現れてトラブルになるおそれがあります。

公正証書遺言を作成する際には公証人が本人と話をするため、明らかに遺言能力に問題がある場合には事前に気がつけます。したがって、一般的には無効な遺言が作成される可能性は低いです。

とはいえ、公証人が見過ごして遺言の作成を進めてしまい、後から問題が生じるケースも存在します。

【参考】認知症の家族がいる場合の遺産分割における注意点

証人が法律上の要件を満たしていなかった

公正証書遺言を作成する際には2名の証人が必要です。証人になるのに特に資格は必要ありませんが、以下の人は法律上証人になれません。

  • 未成年者
  • 推定相続人、受贈者、これらの人の配偶者・直系血族
  • 公証人の配偶者、四親等内の親族、書記、使用人

証人についても確認がなされるため、通常であれば上記の人が証人になってしまう事態は生じません。もっとも、遺言者がルールを誤解しているなどして、不適格者を証人にする可能性は存在します。もし法律上なれないはずの人が証人になっていれば、公正証書遺言であろうと無効です。

【参考】未成年の子どもは相続人になれるのか?

相続人の遺留分を侵害していた

遺言が相続人の遺留分を侵害しており、トラブルになるケースはあります。遺留分とは、兄弟姉妹以外の法定相続人が有する、最低限の遺産の取り分です。

たとえば、妻と子が相続人になるときに、「妻にすべての財産を相続させる」との遺言を作成することは可能です。しかし、子の遺留分を侵害しています。子が納得できなければ「遺留分侵害額請求」により、妻(子から見て母)に対し遺留分相当額の金銭支払いを求められます。

公正証書遺言であっても、法律上認められた遺留分の権利は否定できません。せっかく作成しても結局トラブルになるおそれがあります。

【参考】【弁護士が解説!】相続の遺留分とは?

書いていない財産があった

遺言に分け方を書いていない財産があると、もめる原因となります。

たとえば、遺言で「A銀行の預金は妻、B銀行の預金は長男、C銀行の預金は長女」と定めたとします。死後に、遺言に記載されていないD銀行の預金や、不動産など他の財産が判明すると、他の財産について遺産分割協議をしなければなりません。

遺言により行方が決まっていない財産があると、結果的に話し合いが必要となり、トラブルに発展するおそれがあります。

 

相続でもめた場合の解決方法

相続問題

公正証書遺言を作成したのに相続でもめるケースには、遺言の有効性に疑義が生じる、遺留分を侵害している、分け方が決まっていないといったパターンがあります。それぞれについて、解決方法をご紹介します。

遺言の有効性が争いになった

公正証書遺言であっても、認知症の疑いがあるなど、有効性が争いになるケースはあります。

まずは話し合いをしますが、結論が出ない場合には、遺言無効確認訴訟を提起するのが通常です。訴訟により遺言が有効だと確定すれば、遺言にしたがって相続します。

無効と判断されれば、改めて相続人全員で遺産分割協議を行わなければなりません。相続人だけで話し合いがまとまらなければ、裁判所での調停、審判によって分け方が決まります。

遺留分を侵害していた

遺言が遺留分を侵害していて納得できない相続人がいれば、「遺留分侵害額請求」がなされます。

請求がされると、話し合いがまとまらなければ調停、調停でも決着しなければ訴訟という流れで進みます。公正証書遺言でも遺留分の存在は否定できない以上、権利が正当に行使されれば、請求された側は基本的に支払いに応じなければなりません。

遺言では分け方が決まっていなかった

書かれていない財産が見つかったなど、遺言では分け方が完全に決まっていない場合もあります。

分け方が決まっていない財産については遺産分割協議を行い、まとまらなければ裁判所での調停、審判により決着します。

なお、遺言が有効であり、すべての遺産の分け方が明らかであっても、全員で合意できれば遺言と異なる分け方をしても構いません。

【参考】円満に遺産分割を進めるためのポイント

公正証書遺言でもめないポイント

公正証書遺言でもめないポイント

せっかく公正証書遺言を作成したのに、結局もめてしまうのはもったいないです。後からもめないために、以下のポイントに注意してください。

生前に話し合う

まずは、生前に相続について家族で話し合っておくのが重要です。たとえ特定の相続人に多くの財産を与える、相続人以外に遺贈するといった内容であっても、事前に説明しておけば理解を得やすくなります。

また、公正証書遺言を作成する事実を伝え、死後に確実にチェックしてもらうようにしておくのも重要です。

【参考】相続の手続きの流れと期限・スムーズに進める方法を弁護士が解説

医師の診断書を取得する

認知症の疑いが生じ得る場合には、事前に医師に診断書を作成してもらいましょう。

診断書が絶対ではありませんが、医師によるお墨付きがあれば強力な証拠となります。遺言が無効と主張される事態を想定して、万全の備えをするべきです。

証人の要件を満たしているか確認する

未成年、相続人や受贈者になる人、相続人・受贈者の配偶者や直系血族(親や子など)は、法律上証人になれません。証人をご自身で用意する場合には、法律上の要件を満たしているかを確認しましょう。

遺留分に配慮する

遺言が相続人の遺留分を侵害しないかには注意してください。トラブル防止の観点からは、可能であれば遺留分を侵害しない内容にするのが望ましいです。

遺留分に反する内容にするとしても、理由や思いを付言事項として記載しておくとよいでしょう。

【参考】遺留分と遺留分侵害額請求(遺留分減殺請求)について

事情が変わったら内容を変更する

公正証書遺言であっても、後から撤回したり、新しい遺言を作成したりすることは可能です。後で示した意思が優先されます。

遺言を作成した後に、気が変わった、想定していない財産が加わったなど、事情の変更があれば対応するようにしましょう。

遺言執行者を指定する

スムーズに相続手続きを進めるには、遺言執行者を指定するのも有効です。遺言執行者とは、遺言内容を実現するための手続きを進める人です。

遺言執行者に特別な資格は要求されません。とはいえ、相続に関する知識が必要となるため、弁護士をはじめとする専門家への依頼をオススメします。

【参考】遺言書の作成

遺言書の作成は弁護士にご相談ください

弁護士一同

ここまで、公正証書遺言について、作成の流れ、もめるケース、もめたときの解決法や事前対策などを解説してきました。

公正証書遺言を利用すれば、トラブルのリスクを避けつつ思い通りの内容の遺言を作成できます。とはいえ、問題が生じる可能性はゼロではありません。裁判所での争いになれば、相続人同士が激しく対立してしまいます。相続人と話し合いをする、遺留分に気を配るなど、生きているうちにできる限りの対策をするのが望ましいです。

 

公正証書遺言を作成する際には、弁護士法人山本総合法律事務所までご相談ください。

当事務所は、群馬県内でも規模の大きな弁護士事務所のひとつです。群馬・高崎に密着して、相続に関する数多くの相談を受けて参りました。公正証書遺言についても、内容の決定から必要書類の収集、公証役場とのやり取りなどを徹底的にサポートいたします。安心して手続きをお任せください。

相続は事前の対策が重要です。まずはお気軽にお問い合わせください。

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この記事を書いた人

代表弁護士 山本哲也

弁護士法人山本総合法律事務所

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