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土地の相続で兄弟がもめてしまうケースは?遺産分割のポイントを解説
- 執筆者弁護士 山本哲也
土地の相続では、兄弟同士でもめてしまうケースがあります。とりわけ、親が遺言書を残しておらず、遺産の大半が不動産であるような場合には争いになりやすいです。
土地の分け方は様々考えられますが、各方法にメリット・デメリットが存在します。トラブルを避けるには、事前に対策しておくのがベストです。
本記事では、土地の相続で兄弟がもめてしまうケースや考えられる分け方、事前にできる対策などを解説しています。土地の相続でお悩みの方は、ぜひ最後までお読みください。
目次
土地の相続で兄弟がもめるケース
親が所有していた土地の相続で、共同相続人となった子同士が争いになる典型的なケースとしては、以下が挙げられます。
遺言書がない
遺言書があれば、基本的には遺言の内容にしたがって遺産を分けます。「自宅不動産は長男、預貯金は次男」などと、被相続人が分け方を指定できます。
遺言書がないと、相続人全員による遺産分割協議が必要です。法定相続分に沿って分けるのが基本ですが、不動産があると平等に分配するのが難しくなりやすいです。結果として、遺言書がないと遺産分割協議がまとまらず、長期化する場合があります。
【参考】遺言書の作成
遺留分が侵害されていた
遺言書があったとしても、相続人の遺留分を侵害してトラブルになるケースも想定されます。
遺留分とは、法定相続人が最低限有している遺産の取り分です。子が相続人となったときは、法定相続分の1/2の割合について遺留分を有します。たとえば、子3人が相続人となるときの法定相続分は1/3ずつであるため、遺留分は「1/3×1/2」で1/6ずつです。
財産の大半を特定の人に渡す内容の遺言は、相続人の遺留分を侵害します。遺留分を侵害された相続人が「遺留分侵害額請求」をするなどしてトラブルに発展するリスクが高いです。
遺産の大半が不動産であった
遺産額のうち不動産(土地・建物)が占める割合が大きいと、トラブルになりやすいです。
後述する通り、不動産は平等に分けるのが難しい財産です。遺産に十分な預貯金があれば金銭で調整ができますが、遺産の大半が不動産だと調整はできません。
現金が思いのほか少なく、相続人全員が納得するように分けられないケースはよくあります。「めぼしい財産は自宅不動産しかない」といったケースはもめやすいです。
土地を引き継ぎたい相続人が複数いる
たとえ預貯金が豊富に存在して金銭での調整が可能な場合でも、相続人の土地へのこだわりが強いともめてしまいます。たとえば、先祖代々引き継いできた土地をめぐって、兄弟同士で争いになるケースです。
一応金銭で評価できるとはいえ、土地にはお金で計れない価値があります。土地を平等に分けるのは難しいため、思いが強い相続人が複数いると話し合いがまとまらなくなってしまいます。
【参考】土地と借地権について
特別受益があった
特別受益について争いになるケースもあります。
特別受益とは、一部の相続人が被相続人から生前贈与などにより特別に受け取った利益です。例としては、子が親から自宅の購入資金を受け取っていたケースが挙げられます。
特別受益を受けている相続人がいると不公平であるため、遺産の取り分で調整します。もっとも、特別受益に該当するかをめぐって争いが生じ、土地について話し合いがまとまらない場合も多いです。
【参考】特別受益の問題
寄与分の主張がなされた
一部の相続人が寄与分を主張するケースも考えられます。
寄与分とは、被相続人に特別な貢献をしたと認められる相続人が遺産を多く受け取れる制度です。たとえば、子が親の介護をして財産の減少を避けた場合に認められる可能性があります。
もっとも、寄与分が認められるハードルは高いです。「私は介護による寄与分があるはずだ」「それほどの貢献ではない」などと意見が対立し、遺産分割のトラブルに発展する場合があります。
【参考】寄与分とは
土地の相続を兄弟で行う方法
土地の分け方としては、以下の方法があります。それぞれメリット・デメリットがあるので、状況にあった方法を選ばなければなりません。
現物分割・分筆
現物分割は、財産をそのままの状態で分ける方法です。特に、1つの土地を2つ以上に分けることを「分筆」といいます。
メリットは、土地をそのまま分けられる点です。複数の相続人が土地の取得を希望していたときにも可能な方法です。
もっとも、狭い土地であるなど、分筆によって価値が下がるケースがあります。加えて、土地の形状によっては公平に分けるのが困難です。また、そもそも土地上にある建物は分けられません。
うまく分筆できる土地であれば公平感のある分け方ですが、実際には難しいケースも多いです。全員が納得できるのであれば「土地は長男、預貯金は次男」といった方法も考えられます。
換価分割
換価分割は、売却して現金化し、代金を分ける方法です。
土地が金銭に変わるため、平等に分けやすいメリットがあります。相続税の納税資金が手元にない場合に用意できる点も優れています。
しかし、土地そのものは引き継げません。どうしても手放したくない土地であれば利用できない方法です。土地の売却では買い手が見つからず、時間を要する、思いのほか低額になるといったリスクもあります。
代償分割
代償分割は、一部の相続人が土地を取得し、代わりに他の相続人に金銭を支払う方法です。
土地をそのまま引き継げる点が大きなメリットになります。
しかし、土地を相続する人が代償金を用意できる場合にしかとれない方法です。土地の評価方法をめぐって争いになるケースもあります。
共有分割
共有分割は、土地を相続人同士の共有状態にする方法です。
法定相続分に応じた割合で共有とすれば、ひとまず相続問題を決着させられます。
もっとも、共有分割はその場しのぎに過ぎません。共有状態にある土地の利用・処分等には共有者の同意が必要です。兄弟同士の関係が悪いと、結局土地をめぐる争いが続いてしまいます。さらに、共有者のひとりが亡くなって次の相続が発生すると、関係者が増加し収拾がつかなくなります。
共有分割では最終的な解決にはならないため、なるべく避けるべきです。
【参考】相続した土地が共有名義になっている場合の売却する際のポイントは?
兄弟間の相続トラブルを避けるためのポイント
兄弟間の相続トラブルは、いったん発生すると裁判所での争いになるなど長期化・深刻化しやすいです。未然に防ぐのが重要になります。事前にできる対策としては、以下が挙げられます。
遺言書を作成する
親が遺言を残して分け方を決めておけば、兄弟間で話し合う必要はなくなります。
遺言書は自分だけでも作成できます(自筆証書遺言)。とはいえ、法律上の要件を満たさず無効とされるリスクを避けるには、公証役場で公正証書遺言を作成するのが望ましいです。
ただし、遺言書が相続人の遺留分を侵害するとトラブルが発生するおそれがあります。争いを防ぐには、遺留分に配慮した遺言とするのがベストです。
【参考】遺言書の作成
先に売却しておく
生前に土地を売却しておく方法もあります。
売却して現金化しておけば、平等に分けられトラブルになりにくいです。生前に売ると税金面でデメリットが生じるケースはあるものの、売っても構わない土地であれば検討する価値があります。
代償分割のための資金を用意しておく
代償分割を考えているのであれば、代償金をあらかじめ準備しておくのが重要です。
土地を相続したい相続人が自ら用意するだけでなく、被相続人の生命保険で資金の手立てをする方法もあります。
【参考】遺産分割の流れと方法
土地の相続で兄弟トラブルになった場合は弁護士にご相談ください
ここまで、土地の相続における兄弟トラブルについて解説してきました。
土地を平等に分けるのは難しいため、兄弟間で相続トラブルが発生しやすいです。お困りの方は、弁護士法人山本総合法律事務所までご相談ください。
当事務所は、群馬県内でも規模の大きな弁護士事務所のひとつです。群馬・高崎に密着して、相続に関する数多くの相談を受けて参りました。兄弟での土地相続トラブルについても、豊富な解決実績がございます。
既にトラブルになっている方はもちろん、事前対策を考えている方もお気軽にお問い合わせください。