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相続人が遠方に住んでいる場合、どのように遺産分割をすすめればよいですか?

相続が発生したものの、相続人の一部が遠方に住んでいるため、なかなかコミュニケーションが取れず、遺産分割協議が進まないといった問題が生じることも少なくありません。

そこで、今回は相続人が遠方に住んでいる場合の遺産分割について解説をしていきます。

遠方であっても遺産分割は可能

遠方

このパートではまず、基本的な遺産分割方法について解説した後、相続人の一部が遠方にいる場合の遺産分割の方法について解説します。

基本的な遺産分割の方法

相続人が遠方にいる場合の遺産分割について解説する前に、まず、基本的な遺産分割の方法について解説します。

遺言書がある場合

遺言書がある場合には、原則的には、遺言書にしたがって遺産分割を行うこととなります。

ただし、遺言書とは別の分割方法を全相続人間で協議して、遺産分割をすることも可能です。

遺言書の内容が一部の相続人の遺留分を侵害している場合には、侵害された相続人が他の相続人に対して遺留分減殺請求権が行使する可能性があります。

遺言書がない場合

遺言がない場合には、民法900条に定める法定相続分にしたがって、相続財産を相続人で分けていくことになります。

不動産や有価証券の価額の評価について相続人の間で意見が割れることや、不動産の分け方(現物分割か価額分割か)などで意見が割れることがあり、調整が難しくなることもあります。

【参考】連絡がつかない相続人がいる場合、遺産分割を進めてもよいですか?

相続人が遠方にいる場合の遺産分割

相続人が複数人いる場合、そのうちの一部が遠方にいるということも少なくありません。しかしこのような場合でも遺産分割は可能です。

方法としては以下のものが考えられます。

オンラインの会議や電話、FAX,郵便を活用して、協議で行う。

遺産分割方法について打ち合わせる際に、遠方に住む相続人がいると、一堂に会して話し合いをする、協議が成立した場合の遺産分割協議書に一挙に全員で署名捺印するということは難しいのが実情です。

しかし、昨今は、オンラインの会議システムがありますし、電話やFAXもあります。このような方法を駆使して、意思確認や協議を行い、遺産分割について最終的に合意に至ることは可能です。

完成した遺産分割協議書に複数の相続人が署名捺印する場合には、集合できる相続人は集合して一挙に署名捺印し、集合できない相続人には郵送して、必要個所に署名捺印してもらうことで、協議での遺産分割が成立します。

遺産分割調停の活用

一部の相続人が遠方にいる場合、先に解説したように、協議での遺産分割も可能ではあります。しかし、読んでいただければわかるとおり、かなり煩雑であることは否めません。

そこで、このような場合には、家庭裁判所の遺産分割調停を活用するという方法があります。

遺産分割調停を相続人の一人が起こす場合は、他の相続人のうちの一人の住所地を管轄する家庭裁判所か、あるいは相続人全員が合意した家庭裁判所に起こすことができます。

調停が係属している家庭裁判所に相続人全員が集まることができれば、もちろん何の支障もなく調停を進めることができます。

しかし、一部の相続人が家庭裁判所から遠くて出頭が難しいという場合には、最寄りの家庭裁判所に出頭したうえで、電話会議を用いて出頭することも可能です。

また、調停委員を介して利害調整をしてもらうことも可能なので、相続人だけでは難しい話し合いも、調停であれば進められる可能性が相当程度あります。

【参考】相続人調査や戸籍の収集方法

トラブルになった際に対応

トラブル

一部の相続人が遠方にいる場合の遺産分割で起こりがちなのが、相続財産を他の相続人が隠匿しているのではないかという疑惑や、不動産の評価額について合意ができないといったトラブルです。

このような場合には、隠匿されていると考えている遺産を特定してもらって、例えば預貯金の場合には金融機関に照会する、不動産の評価に不服を持っている相続人自らが当該不動産の評価をしてもらい、それらを突き合わせて検討するといった対応をする必要があります。

また、調停を活用していれば、不動産の評価については、裁判所で鑑定をしてもらうことも可能です。ただし、裁判所での鑑定には、場合によっては多額の費用がかかることもあり、原則的には相続人間で折半することになります。

【参考】相続紛争とは?トラブルになりやすいケースや紛争を起こさない方法について弁護士が解説

遠方で財産がわからない場合の対応

遠方にいると、被相続人がどれだけの相続財産を残したのかわからず、提案された遺産分割をそのまま受け入れてよいのか判断できないという場合も少なくありません。

そのような場合には、相続財産を把握している相続人から、相続財産の一覧表とそれらに関する資料を一式送ってもらうことが必要でしょう。

たとえば、預貯金であれば、過去1年から2年分の預金通帳の写し、不動産であれば権利証や不動産の評価書、有価証券については現在の価値がわかる資料などです。

そして、これらを検討した結果、不審な預金の引き出しが認められる場合には他の相続人に事情を尋ねたり、不動産の評価に納得がいかない場合には、自ら不動産業者に不動産の評価をしてもらうといった対応をして、自分が不利益を被らないように対策を講じることが必要となります。

【参考】相続財産調査の方法

まずは弁護士にご相談ください

弁護士集合写真

解説をお読みいただいてもわかるとおり、相続人が遠方にいる場合の遺産分割は、相続人間のコミュニケーションがとりにくいうえ、手続も煩雑になります。

また、相続人相互間の不信感が募りやすくもあり、早期に遺産分割をしたくても、遅々として進まないといった問題も生じがちです。

2024年4月からは相続登記が義務化され、相続により不動産を取得した相続人は、所有権取得を知った日から3年以内に相続登記の申請をしなければならないという規制ができましたが、これに間に合わないリスクも生じます。

このようなリスクを防ぐためにも、相続人が遠方にいる場合、あるいはご自身が他の相続人から離れて暮らしているために、遺産分割に十分に参加できないという場合は、ぜひ一度弁護士にご相談ください。

弁護士であれば、相続財産の調査をスムーズに行うことが可能であり、また、権利を守るための法的手続をしっかり採ることができます。

当事務所には、遺産分割に精通した弁護士が在籍しております。どうぞお気軽にご相談ください。

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この記事を書いた人

代表弁護士 山本哲也

弁護士法人山本総合法律事務所

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