相続人が遺産を分け合うには「遺産分割協議」をしなければなりません。
遺産分割協議とは、相続人間で相続財産の分割方法を話し合うことです。
できる限りスピーディかつ希望通りに遺産を受け取るため、遺産分割協議の正しい進め方を把握しておきましょう。
今回は遺産分割協議のポイントについて、弁護士が解説します。
目次
1.遺産分割協議の前提
遺産分割協議を行う際、前提として「相続人の確定」と「遺産の確定」の2つの対応を進めねばなりません。
1-1.相続人の確定
遺産分割協議には、相続人が全員参加する必要があります。1人でも欠けていれば遺産分割協議が無効になります。そこで事前に「相続人調査」を行い、相続人を正しく把握しなければなりません。
具体的には「被相続人が生まれてから亡くなるまでの全部の戸籍」「相続人の全戸籍」を取り寄せて、被相続人の実子、養子、配偶者や親、兄弟姉妹などの親族関係を明らかにします。
戸籍謄本を取り寄せる方法
戸籍謄本類は、本籍地のある役所に申請すれば取得できます。現地に取りに行ってもかまいませんが、郵送で取得するのが便利でしょう。1通450円または750円の費用がかかり、往復の送料(郵便切手)も発生します。
取得した戸籍謄本類に「漏れ」があると相続人が抜け落ちて遺産分割協議が無効になる可能性もあるので、慎重に対応しましょう。
1-2.遺産の確定
遺産内容が確定しないと分割は不可能です。以下で主な遺産の調べ方をご紹介します。
銀行預金 | 各金融機関へ照会を行い、相続開始時の残高証明書や相続前後の取引履歴を取得して確認する |
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株式 | 取引している証券会社や証券保管振替機構に照会をして調べる |
不動産 | 法務局で不動産の全部事項証明書を取得したり、役所で「固定資産管理台帳(名寄せ帳)」を確認したりして調査する |
基本的には上記の通り、「銀行預金」「株式」「不動産」を調査することになりますが、次の2点も行っておくと安心です。
- 家の中や貸金庫内を確認
家の中のタンスや棚、机や引き出しなどに現金や証書などが保管されているケースがよくあります。
銀行の貸金庫内にも遺産に関する資料が入っている場合があるので、これらについても確認しましょう。
- スマホやPCの確認
ネット証券やネット銀行で取引をされていた場合、スマホやPCにアクセスする必要があります。
IDやパスワードが分からない場合、取引先の銀行や証券会社へ直接連絡してみてください。
遺産の範囲について争いがある場合
預金の使い込みや隠匿の可能性があって遺産の範囲を確認できない場合、先に遺産確認訴訟等を行って遺産の範囲を確定させる必要があります。
2.遺産分割協議の方法
遺産分割協議の方法に特別なルールはありません。全員が一堂に会して話し合いをしてもかまいませんし、電話やメール、手紙も利用できます。
弁護士を代理人にして協議を任せる方法もあります。
弁護士がついていると法律的に正しい配分で遺産を分け合うことができ、相手が強硬でも不利益な条件を押しつけられる危険が低減します。困ったときには是非ご相談ください。
3.遺産分割の基準となる「法定相続分」
遺産分割協議では、基本的に相続人たちが「法定相続分」に応じて遺産を取得します。
法定相続割合とは、民法の定める遺産相続の割合です。
具体的には以下のようになります。
- 配偶者と子ども(第1順位の相続人)が相続する場合・・・配偶者が2分の1、子どもが2分の1
- 配偶者と親(第2順位の相続人)が相続する場合・・・配偶者が3分の2、親が3分の1
- 配偶者と兄弟姉妹(第3順位の相続人)が相続する場合・・・配偶者が4分の3、兄弟姉妹が4分の1
※配偶者は常に相続人となります。
※同じ順位の相続人が複数いる場合には、人数で頭割り計算します。
上記をまとめたのが以下の図ですので、参考になさってください。
法定相続人と法定相続人については、以下のページで詳しく解説しています。
▶ 誰が相続人になれるか、どれくらい遺産をもらえるかを教えて欲しい ~法定相続について弁護士が解説~
4.寄与分や特別受益について
「寄与分」や「特別受益」があると、法定相続分が修正される可能性があります。
寄与分とは
被相続人の財産の維持・増加に特別の貢献をした相続人がいる場合、その相続人の遺産取得分を増やします。
なお近年の民法改正により、相続人ではない親族が献身的に介護した場合にも、その親族に「特別寄与料」という金銭の取得権が認められるようになっています。
特別受益とは
被相続人から生前贈与を受けた相続人がいる場合、生前贈与分を相続財産の一部とみなして受贈者の相続分を減らします。
これを「特別受益の持ち戻し計算」といいます。
5.法定相続人でも遺産分割協議に参加しない場合
もともと法定相続人であっても、以下のような場合には相続権がなくなるので遺産分割協議に参加しません。
欠格事由がある
被相続人を殺害したり遺言書を破棄、隠匿したり無理矢理遺言書を書かせたり書き換えさせたりした場合、相続人の資格を失います。
廃除
被相続人を虐待したり著しい非行があったりして被相続人の申立により「廃除」されたら、相続権を失います。
相続放棄
相続放棄したら始めから相続人ではなかったことになるので、遺産分割協議に参加しません。
6.行方不明の相続人、連絡を取れない相続人がいる場合
連絡を取れない相続人がいる状態では遺産分割協議を進められないので、まずは所在の調査を行います。
現住所地に居住しているようであれば遺産分割調停を申し立てると良いでしょう。
行方不明になっていたら家庭裁判所で「不在者財産管理人」を選任しなければなりません。
7.遺産分割協議をスムーズに進める方法
遺産分割協議はいわば「交渉」です。ただ当人同士が自分の主張ばかりを優先すると、トラブルが激化して収拾がつかなくなりがちです。
特に親族同士の争いは「骨肉の争い」となり深刻化しやすいので注意してください。
スムーズに進めるため、法的に正しい知識を身に付けて冷静に対応しましょう。できれば始めから弁護士によるアドバイスを受けておくと安心です。
当事務所では遺産分割協議に際し以下の2種類のサポートを行います。
- 弁護士が代理人として交渉
- 遺産分割協議の際、調停・審判を見越して有利に進めるためのアドバイス
群馬県で遺産分割協議を行おうとする際には、まずはお気軽にご相談ください。