遺贈とは
遺贈とは、遺言によって遺産の全部又は一部を特定の人に無償で与える行為をいいます(民法964条)。
遺贈の利益を受ける者を「受遺者」と呼び、遺贈を実行すべき義務を負うものを「遺贈義務者」と呼びます。
遺贈は、遺言によってなされる相手方なき単独行為です。
死因贈与(民法554条)は、遺贈に類似していますが、単独行為ではなく契約である点で、遺贈と異なります。
遺贈には、包括遺贈と特定遺贈があります。
包括遺贈は、遺産の全部または一定割合で示された部分の遺産を受遺者に与える処分行為で、「遺産の全部」「遺産の3分の1」というように遺贈する財産を指定するものです。
遺贈を受ける者を受遺者と言い、包括遺贈を受ける受遺者を包括受遺者と言います。
包括受遺者は、相続人ではありませんが、相続人と同一の権利義務を負うことになります(民法990条)。
そのため、遺言者に借金等のマイナス財産があれば、当然遺贈の割合に従った債務も引き受ける必要があるのです。
そこで、包括受遺者も相続人と同様の手続きで、遺贈の放棄や限定承認を選択することが可能です。
遺贈を放棄する場合には、自分に包括遺贈があったことを知った時から3ヶ月以内に、家庭裁判所に対し放棄の申請を行い(民法915条1項)、限定承認をする場合には、他の相続人と共同して手続きをすることになります(民法923条)。
なお、受遺者は法定相続人である必要がないので、遺言者に「この人に財産を与えたい」と思う相手がいれば、個人・法人を問わず、誰でも自由に自分の財産を譲り渡すことが可能です。
これに対して特定遺贈とは、例えば 「自宅土地を甲に与える」 というように、特定された具体的な財産的利益を対象とする遺贈をいいます。