相続人調査が終わったら、その結果をもとに「相続関係説明図」を作成しましょう。
相続関係説明図とは、被相続人と相続人の親族関係を明らかにする一覧の図面です。一目で「誰が相続人なのか」がわかり便利なので、さまざまなシーンで活用されます。
今回は相続関係説明図の作成手順や利用方法を、弁護士が解説します。
目次
1.相続関係説明図とは
相続関係説明図とは、亡くなった被相続人と相続人の関係を家系図のように記入して図面化し、一覧でわかるようにしたものです。被相続人と相続人の氏名、続柄、生年月日、死亡年月日などの情報を記入し、それぞれの人を線でつないで親族関係を明らかにします。
相続関係説明図の例
書式は特に決まっておらず、縦書きでも横書きでもかまいません。
手書きでもかまいませんが、パソコンのエクセルソフトを使って編集すると便利に作成できるでしょう。
2.相続関係説明図の作成方法
相続関係説明図を作成するには、相続人調査を終えている必要があります。
相続関係が明らかにならないと、正しく相続関係説明図を作成できないのでまずはしっかり戸籍謄本類を集めましょう。
図面を作るときには、以下の手順で進めてください。
被相続人と相続人を記入
被相続人を中心に、親や子ども、孫、配偶者などの相続人の氏名を記入してそれぞれを線でつなぎます。
相続人の必要事項を記入
それぞれの人の「相続人との続柄」「氏名」「住所」「生年月日」「死亡年月日」「住所」を記載します。
被相続人の必要事項を記入
被相続人については「最後の住所」「最後の本籍」「死亡年月日」を記入します。
このように必要情報を書いて線でつないだら、相続関係説明図は完成します。
3.相続関係説明図の利用方法
相続関係説明図は、以下のような機会に利用します。
3-1.法務局で名義変更をするとき、戸籍謄本の還付を受ける
不動産を相続して法務局で名義変更の登記をするときには、被相続人の出生時から亡くなるまでのすべての戸籍謄本類を提出しなければなりません。ただ登記が終わっても戸籍謄本類を返してもらえないので、次に金融機関で預貯金の払い戻しなどを受けるためには再度戸籍謄本類を集め直さねばなりません。それでは大変な手間がかかります。
不動産の名義変更の際、相続関係説明図を一緒に提出すると、手続きが終わったときに戸籍謄本類を返還してもらえます。すると、別の相続手続きを進めるときに戸籍謄本類を集め直す必要がなくなり、手間が省けます。
3-2.金融機関で預貯金の払い戻しや名義変更を行う
金融機関で預貯金の払い戻しや名義変更を行うときにも、基本的に戸籍謄本類をすべて提出しなければなりません。相続関係説明図がなければ、戸籍謄本類は提出したまま返してもらえません。
手続き時に相続関係説明図を提出すると、名義変更終了時に戸籍謄本類を返してもらえるので別の手続きに流用できます。
3-3.証券会社で株式の名義変更を行う
証券会社で株式の名義変更を行う場合も同じです。
戸籍謄本類と一緒に相続関係説明図を提出すると、戸籍謄本類を返してもらえるので再度集め直す手間が省けます。
3-4.裁判所に遺産分割調停を申し立てる
裁判所で遺産分割調停を申し立てるときにも、相続関係を明らかにするため相続関係説明図を提出すると調停委員や担当の裁判官に案件の内容が伝わりやすくなります。
3-5.税理士や弁護士に相続の相談をするときに説明をしやすくなる
税理士に相続税関係の相談をしたり弁護士に遺産分割協議に関する相談をしたりするとき、相続関係説明図を持参すれば相続人の概要がわかり、専門家が問題点を把握しやすくなります。
すべてを口で説明するのは大変なので、専門家に相談するときにも図面を持参するのが良いでしょう。
4.法定相続情報証明制度について
相続関係説明図に関連して、法務局の「法定相続情報証明制度」があります。
4-1.法定相続情報証明制度とは
法定相続情報証明制度とは、法務局が相続関係を証明してくれる制度です。
相続人が自分で申請書と専用書式の相続関係説明図を作成して提出すると、法務局が「法定相続情報一覧図」を発行してくれます。
法定相続情報一覧図があれば、個別に被相続人の生まれてから死亡するまでのすべての戸籍謄本類を取得しなくても名義変更などの相続手続きができます。たとえば金融機関に「法定相続情報一覧図」を提出すれば、被相続人の戸籍謄本類がなくても預金の払い戻しや名義変更が可能で、自動車の名義変更もできます。
法定相続情報一覧図があれば、戸籍謄本類を何度も取り直す必要がないばかりか、戸籍謄本類を提出する必要すらなくなります。
いわば「相続関係説明図」に法務局が「この内容は正しいです」とお墨付きを与えてくれる制度と理解すると良いでしょう。
4-2.法定相続情報一覧図と相続関係説明図の違い
法定相続情報一覧図と相続関係説明図はとても似ているので、混同される方もたくさんいらっしゃいます。以下で違いをご説明します。
① 法務局が認証しているかどうか
法定相続情報一覧図と相続人が作成した通常の相続関係説明図の根本的な違いは「法務局が認証しているかどうか」です。法定相続情報一覧図は、法務局が「この内容は正しいです」と認証しているので高い信用性が認められます。
一方相続関係説明図は相続人達が自分で作成した書類なので、内容が正しいかどうかはわかりません。
② 戸籍謄本類の提出を省けるかどうか
法定相続情報一覧図の場合、すでに法務局が確認して「この内容は正しい」と認証しているので根拠資料である戸籍謄本類は不要です。戸籍謄本類を添付する必要はなく一覧図のみを提出すれば名義変更が可能です。
一方相続関係説明図を利用する場合には、一緒に戸籍謄本などの「根拠資料」をつけなければ名義変更を受け付けてもらえません。
5.法定相続情報制度の利用方法
法定相続情報を利用したい場合には、以下のような流れで進めましょう。
戸籍謄本類と住民票、申出人の身分証明書を用意する
申請には被相続人の出生時から死亡時までの戸籍謄本、被相続人の住民票の除票、申出人(相続人)の運転免許証等の身分証明書が必要です。
法定相続情報一覧図を作成する
法務局の書式を利用して自分たちで法定相続情報一覧図を作成しましょう。
申出書を作成して必要書類と共に法務局に提出する
申出書は法務局のページからダウンロードできます。申出書を作成して法務局へ提出すれば手続きが完了します。
不備がなければ2週間程度で法務局が認証した法定相続情報一覧図が交付されます。
6.相続関係説明図の作成に悩んだら弁護士に相談を
相続人調査や相続関係説明図の作成は、相続人の方にとって大変な手間と時間がかかる作業です。
お悩みの際には弁護士にご相談ください。遺産分割における財産調査、相続人調査、相続関係説明図の作成も全てあなたの代理人となって進めることが可能です。
相続人同士でもめてしまって手続きが進まない、といった相続紛争も弁護士であれば対応可能ですので、まずは一度お問合せください。