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特定の相続人に引き継ぎたい場合の具体例
家業を継いでくれることに対する感謝の意味と、家業を継ぐ上で必要な不動産や動産について、他の相続人と分割することで不都合が生ずるのを防ぐ意味もあって、家業を継いでくれる者に多めに財産を承継させたいというのは、決して珍しいことではないと思います。
このような場合、家業を継いでくれる相続人が引き継ぐ財産が、他の相続人より多くなるように各相続人への財産の分配を考えた上、それを内容とする遺言をしておくことが考えられます。例えば、家業に必要な不動産や動産、家業の運営に必要な資金にあてるための現金や預金などを、家業を引き継ぐ相続人に、それ以外の財産を他の相続人に、それぞれ相続させるといった具合です。
遺言書を作成する場合には、民法の定める方式に従って作成しないと、遺言としての効力が認められませんので、注意が必要です。
また、遺言書の内容が、遺留分(相続財産のうち、一定の相続人に最低限のものとして法律上保障されている取り分のことです)を侵害するものであれば、遺留分を有する相続人がその権利を行使することで、遺言によって財産を得た者は、遺留分の侵害額に相当する金銭の支払い義務を負担することになりますので、この点にも注意が必要です。
農業を継いでくれる長男に財産を引き継がせたい
例①農業に従事してきた一家で、長男の方が後継者になりましたが、相続を考えると農地と長男夫婦が住む実家の土地と建物しか財産がない。
そのため、農業を継いでくれる長男にはそれらの財産を引き継がせたいが、ほかに財産がないので、次男と三男に引き継がせる財産が無くなってしまう。
このような場合、どうしたら良いのでしょうか。
家業である農業を引き継ぐ者(今回の場合は長男)に全財産を相続させる旨の内容の遺言書を作成すること自体は可能です。
しかし、そうすると、他の相続人である次男や三男の遺留分(相続財産のうち、一定の相続人に最低限のものとして法律上保障されている取り分のことです)が侵害されます。
したがって、この場合、全ての財産を家業である農業を引き継ぐ者に相続させることについて、すべての相続人に納得してもらう必要があり、そうでない限り、今回のケースでは、相続人である長男は遺留分侵害額に相当する金銭を次男と三男に支払うことになります。
個人商店や個人企業の場合、代表者の死亡は、代表者の交替と相続の両方を意味します。
もっとも後継者がなければ、そのまま事業は消滅又は売却か譲渡ということになると思われます。
相続人の誰かが引き継ぐなどして事業継続ということになった場合、普通に相続が行われると、資産が散逸することで事業継続が困難になってしまうおそれもありえます。
そこで、今回のご相談のように事業を引き継いでくれる相続人に、事業の資産としてより多くを遺してあげたいという話になるわけです。
そして、そのための手段としては、遺言や生前贈与を活用する方法が考えられますが、いずれにしても内容によっては遺留分(相続財産のうち、一定の相続人に最低限のものとして法律上保障されている取り分のことです)による金銭的調整をすることになります。
ですから、生前贈与によるにしろ遺言によるにしろ、遺留分を考慮することが必要になってきます。
パン屋の商売に関する資産の全てを長男に相続させる方法
パン屋の商売に関する資産の全てを長男に相続させる方法としては、パン屋の経営に関する資産を一つ一つ特定した上で、それらの財産につき長男に相続させるという内容の遺言書を作成しておく、という方法が考えられます。
しかし、被相続人に商売に関する資産以外の財産が十分にない場合は、この内容の遺言だと他の相続人の遺留分を侵害する恐れがあります。その場合は、例えば、他の相続人に遺留分の放棄をしてもらうという方法や、遺留分を侵害した分については長男が金銭を支払うという方法が解決方法として考えられます。
「遺留分」とは、民法が一定の範囲の相続人に認めた、相続に関しての最低限度の取り分ということができ、これについては遺言によっても侵害することはできません。遺言が遺留分を侵害する内容のものである場合、遺留分権利者である相続人は、遺留分侵害額請求権を行使することにより、遺留分を保全するために必要な限度で金銭の支払いを受けることができます。
遺留分を侵害された他の相続人が、遺言書の内容に理解があって長男が商売に関する資産をすべて相続してパン屋さんを継ぐことに賛成であれば問題がない場合もありますが、あとで問題にならないためには「遺留分放棄」をしてもらうのが確実です。遺留分放棄は、相続が始まる前でも後でも可能ですが、相続が始まる前の遺留分放棄については家庭裁判所の許可が必要になります。
今回のご相談の場合、亡くなられたお兄さんが遺言をしていたかという問題と、法定相続人が誰かという問題があります。
亡くなられたお兄さんが遺言を遺していた場合、基本的にはそれに従って相続が行われることになります。ですから、例えば、飲食店の店舗と敷地を相談者の方に譲るといった内容の遺言がされていれば、飲食店の店舗や敷地の所有権を相談者の方が取得することになりますので、
同じ店舗で飲食店を続けていくことにそれほど大きな問題は無いかと思います(ただし、遺留分侵害額請求権が行使されるような場合は別です)。
これに対して、そのような内容の遺言がされていない場合、亡くなられたお兄さんの法定相続人が誰かという問題になります。もし、亡くなられたお兄さんにお子さんがいる場合や、ご両親がご存命の場合でこれらの方が相続人となる場合、相談者の方は相続人には当たりませんので、飲食店の店舗や敷地について所有権を取得することはできないことになります。
そのため、このような場合には、相談者の方は、飲食店の店舗や敷地の所有権を相続により取得した者と交渉して店舗を借りるなどできれば、今まで同じように飲食店を続けていくことができるということになります。
弁護士などの専門家に依頼して早い段階からのサポートを受ける
事業を承継させたいがために特定の相続人に財産を集中させるためには他の相続人の理解が必要です。仮に他の相続人を相続廃除や相続欠格などにしても代襲相続などがあるので現実的ではありません。しかし、早い段階から弁護士に依頼することで相続財産になるものを調べてもらえるので遺留分が足りるようになる可能性もあります。そのほかにも遺言書の書き方など包括的な法律サポートが受けられるので早い段階から相談することをお勧めします。
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